箱の中には、ボールとグローブが住んでいました。

「僕はバット。よろしく」

「や、やあ。僕はボール。よろしくね」

「あ、あのぅ、ぼ、ぼくは・・・」

グローブ君が閉じたり開いたり恥ずかしそうにしていると、ボール君が代わりに紹介しました。

「まったく、しっかりお話してよ。この子はグローブ君って言うんだ。ちょっと人見知りだけど、良い子だよ。でも、びっくりだなあ。この中にバット君が入ってくるなんて」

「どうして、びっくりなの?」と、バット君はボール君にたずねました。

「おじいさんはほとんどのバットをお客さんに売ってしまうから、この道具箱にはすごく気に入った子しか入れないんだよ。いつか、子供さんと野球をするのを夢見て作った道具箱なんだ」

「いつか?」と、バット君はまたボール君にたずねました。

「ああ、そうだよ。結局、子宝にも恵まれなくて、おばあさんがいなくなってからは、僕たちは使われることもないまま、ここでじっとしてるけどね」