「安藤いるー?」
「はい、僕ですけどどうしたんですか?」
そりゃそうだろうな、
一度も話したこともない奴に話しかけられたらびっくりするよな。
でも、今の俺は少し嬉しかった。
ーーーーだって、
安藤が俺に呼ばれて、きっと君は安藤を見ているんだろうけど、
少しでも俺を見てくれてる気がして。
もしかしたら、初めて君の瞳の中に入れたのかもしれないと思うと、
ニヤけてしまう俺に安藤は…
「あの、僕であってますよね?」なんて聞いてくる。
そうだよ。
(好きなやつの好きな人くらい気になるのが当たり前だろ!)
好きな奴に好意を向けられてる安藤が羨ましくってつい。
『お前が羨ましいよ』なんて呟いていて……
そんな俺に安藤は。
『高峯くんは優しいですね』なんて。
よく分からないことを言われた。
(そんなこと言われる意味なんてないのに…)
俺はただ、こんなに想っていても、
壱条には届かなくって、何もできない自分が悪いのを分かっていながらも、
安藤に嫉妬してるくらいで…
優しさなんて一つもないのに……。
どうしてそう安藤は思う訳……?