「なんかなんてもんじゃねぇよ」

昨日の出来事を話すと朔が言う。


「お前にしては珍しいお人好しだな」

そんなこと言われなくたってわかってるよ。

それでも、好きな人の幸せを願う方がいいと思った。


「まー、いいんじゃねぇの?そんな恋もあっても、お前のしたことなら俺は何も言わないけど好きな気持ちを抑える必要はないと思うぞ?…もう少し自分の気持ちに素直にいけよ。」


その言葉を待っていたかのように。

俺はなぜか心が軽くなった気がした。


(そうだよな、いいんだよな…。)


好きな気持ちは誰にも負けないんだから。


安藤なんかに渡したくなんてねぇよ……


(ありがとう朔、教えてくれて……。)


でもその気持ちは簡単に崩されていくことを、

この時の俺はまだ知らなかった…。