キミの恋のはじまりは

「………今日さ、葉山さんと……会ってた?」

「え、あ、う、うん……」

「なんで前もって言ってくれなかった?いつも教えてくれるじゃん?」

「きゅ、急だったから、連絡しそびれて……それで、」



しどろもどろになって言い訳を探そうとする私を見つめる泉の瞳が大きく揺れている。

泉はゆっくりと瞬きをして、何かを諦めたような色を目元にのせた。



「……そっか」



短く吐き出された言葉がうつろに響く。


私の髪から泉の手が離れて、手のひらに滑り落ちてくる。



「帰ろっか」



いつもなら、すぐに繋ぎたくて、そのぬくもりに包まれたいけれど……、今日は素直に握り返せない。

花島さんから受け取っていたかわいい紙袋はもう今は泉の手にはない。でも、私の記憶には濃く残っている。

私が握り返さずにいれば、泉は気まずそうに人差し指だけをきゅっと絡めてくる。



「……ごめん、嫌な言い方した」

「……」

「……莉世と葉山さんを見たって……花島が言ってて」

「…は、なじまさん?」

「駅で偶然会ってさ。俺、きいてねーわって……見間違いじゃねーのって」



泉は「でも、見間違えじゃなかったんだ」と視線を繋がった指に落としたまま、苦しそうに呟いた。


……泉にこんな顔させて、謝らせて。私、最低だ。

サプライズとかもう、どうでもいい。本当のこと言わなくちゃ。


そう思うのに、胸の奥に嫌な音が響き渡って邪魔をする。