キミの恋のはじまりは

そのまま俯いて歩き続けていると、視界の先に月に照らされ伸びた影が見えた。


あ、誰かいる。


道の端に避けようと視線をあげると、会いたいのに、会いたくない人がいた。



「……泉?」


電柱にもたれ掛かっていたその人は、私を見ると少しだけ困ったように笑った。



「……ほんと、帰ってきた……」

「え、どうし……」

「待ってた」



待ってたって……、私、今日、葉山さんの家に行くこと言ってないのに?いつ帰ってくるかもわからないのに?どういうこと?

電柱から離れた泉が私の前まで来て、なにか言いたそうに私の髪に躊躇いがちに触れた。



「えっと、連絡くれてた?ごめん、メッセージ見てな……」

「してない」

「じゃぁなんで……」

「……今日、寄り道してたんだ」

「ああ、うん、ちょっと……」



思わず言葉を濁してしまったら、私の髪をいじっていた泉の手がぎゅっと毛先を握った。

一瞬、泉は息を詰めて苦しそうな顔をして、ふっと口元に力を入れた。