キミの恋のはじまりは




甘い匂いが充満したキッチンで、きれいに出来上がったフォンダンショコラを見つめて感動の私。



「で、できた~!いい香り~!」

「なんかすっごい達成感っ!!」



真由ちゃんと手を取り合って喜び合っていると、智香さんがくすりと笑った。



「ふたりともかわいいなぁ。そんな目をキラキラさせちゃって」



エプロンを取って出来上がたばかりのフォンダンショコラをお皿にのせ、その傍らにこっくりとした生クリームを添えてくれる。

智香さんは葉山さんのお父さんの再婚相手らしいけど、明るい雰囲気と壁を作らないところが葉山さんと似ていて、私も気負わずに話せる。



「さ、座って試食しよ。いま、紅茶入れるね」

「「はいっ!」」



今日、私たちは葉山さんのお家で智香さんにフォンダンショコラの作り方を教えてもらっている。

前に遊びに来たときに出してくれた智香さんの手作りフォンダンショコラがすごく美味しかったので、バレンタインに泉に作りたいと思ってお願いしたのだ。

いままでも、泉にバレンタインにチョコをあげたことはある。

……小学校の時、お母さんが「お隣の兄弟に」って用意していたものだけど。


でも、今年は、私が泉に、泉だけのためにちゃんと用意したい。


サプライズで驚かせようと思っていて、泉には秘密にしてくれるよう葉山さんにも頼んである。

目の前のフォンダンショコラにフォークを差し込めば、とろりとチョコが流れ出す。

ぱくっと一口食べれば、我ながらよくできたと思うほどおいしい。


泉、喜んでくれるかな……。


「うん、おいしい。これだけできれば、家でもひとりで作れるね」