いつもの待ち合わせ場所に、泉の姿を見つけた。

呼びかけようと息を吸い込んだ次の瞬間、慌ててその声を飲み込む。


女の子だぁ……。


泉の正面に女の子が立っていて、すっと心臓が冷えた。

そのまま、後ずさって、近くにあった自動販売機の影に隠れ、顔だけちらっと出して様子を伺う。


うぅ……、こういう時、どうしていいかわかんない。

とりあえず、近づくのはなし。そういうのは苦手。

女の子がいなくなるまで、こうやって様子をうかがうしかないのがいつものこと。


それにしても、自動販売機に両手をかけてあっちの様子を凝視する私、明らかに不審者でしかない……。とは思うものの、気になって目をそらすこともできない。



「ほほ~、なにやら楽しそうだね、片桐くん」



背後からかけられた声に「ひっ」と思わず小さく悲鳴をあげ振り向くと、さっき別れたはずの真由ちゃんが手を眉の上にかざして、泉と女の子を見ていた。



「な、なんで?」

「莉世が自販機の裏に隠れるのが見えたから、あ、またかぁ~って思って戻ってきた」

「うぅ…ありがと」



持つべきものは、やっぱり心の友だ。

真由ちゃんの気遣いに目が潤みかけていたら。



「それに、イケメンがかわいい女子と見つめ合っている風景は、青春の象徴!目の保養!」



……うん。ソッコーで潤みが乾いたよ。


ぶすっと頬を膨らませた私に、真由ちゃんは「うそうそ」と笑った後「でも漫画の世界だよね~何度見ても」と感心したようなため息をついた。

「ほんとに……こういうことってあるんだねぇ」と呟けば「他人事じゃないでしょ」とツッコミを受けるけれど、どこか別世界のような感じもする。

視線を泉たちに戻す。女の子は泉と同じ制服をまとっていて、それだけで私にはないものをたくさん手にしているようなきらきら感があって眩しすぎる。