キミの恋のはじまりは

家に帰りついて自分の部屋のベットの上に倒れ込むと、見計らったかのようにスマホが震えた。

重たい体を起き上がらせて、鞄の中のそれを取り出すと、表示された名前に胸が軋む。

深く呼吸を一回して、指をスライドさせた。



『莉世?』



…なんでこの声だけいつでも心に届くのかなぁ。

心が震えれば自然とこみ上げてくる涙を必死に堪える。



「……どうしたの?」



電話で良かった。今はきっと上手く隠せない。

それに、顔を見てしまったらきっと言えない。



『ん、何してるかなぁって』

「…なにもしてないよ、ごろごろしてた」

『…ほんとは、声が聞きたくなって」

「っ、」



そんなこと言われたら、もう耐えられないよ。

涙がぽろぽろ落ちていく。

もう涙は止められなそうだから、せめて声だけはいつもどおりでいようと、静かに体の熱を逃す息を吐いた。



「……ねぇ、泉」



名前を呼べば、胸いっぱいに広がる甘い記憶。蕩けるように目を細めた彼。

喉にぐっと力を入れて、声を絞り出す。