キミの恋のはじまりは



どうやってカフェを出てきたんだろう。

気が付くと駅のホームにあるベンチに座っていた。


私、ココア、どうしたかな…。


そんなことが頭をよぎるのは、きっと何も考えたくないから。

鼻の奥がツンとして痛くて、喉の奥に熱が詰まって苦しい。



「…莉世ちゃん?」


名前を呼ばれた気がした。



「……なんで泣いてんの?」



泣いて?

言われて自分の頬が濡れていることに気がついた。

拭っても流れた涙は次々と溢れてきてきりがない。

頬に誰かの指先が触れて、その元を辿れば……葉山さんがいた。

私の横に座って、心配そうに瞳を揺らしている。

なんで葉山さんがいるんだろう。



「…片桐となんかあった?」



名前を聞いただけで、ぐらりと世界が揺れる。

一瞬、期待した。

涙を拭ってくれたのは、泉なんじゃないかって。祈るようにそう願った。

そんなの、あるわけない。あっちゃいけない。また頼ってしまう。



「なにも、ないです」



泉はなにも悪くない、昔から。

気づきたくなかった。見ないふりしたかった。

両手で顔を覆って、涙を止めようとするのに、ちっとも言うことを聞いてくれない。



「…‥俺に、寄りかかってもいいよ」



優しい声が聞こえる。

きっとそこはあたたかくて、私の涙を止めてくれる。


でも。


ちがうの、そこじゃないの。

本当は昔からちがうの。本当に待ってた人は一人だけだから。

もうごまかせない感情に気が付けば、ぷるぷると首を横に振るしかできなかった。