キミの恋のはじまりは

心の中でひとり唸っていると、地面に落ちていた視界に泉が滑り込んできて喉が詰まった。



「莉世、話聞いてた?」

「え、あ、ごめん。なに?」



覗き込まれた視線から逃げるように、上半身を反らせて少しだけ距離をとって聞き返す。



「来週の土曜日、時間ある?って言ったの」

「来週…」



頭の中でカレンダーを捲る。11月最後の土曜日、かな。



「空いてるよ?」

「じゃぁさ、これ、食べに行く?」



私の方に向けられたスマホ画面には、きらめき放つフレンチトーストの画像が映し出されていた。

こ、これは…!



「いく!!いくよー!行くに決まってるー!!」



自分のスマホを取り出して、同じフレンチトーストの画像をその目の前にかざす。



「ほら、このお店でしょ?!このフレンチトースト、めちゃくちゃ有名なんだよ!この使ってるバゲットがね、フレンチトースト用にわざわざ配合した粉で作ってるらしいよ!絶対おいしいと思うんだよね~!うわぁぁ、楽しみだなぁ。あ、真由ちゃんも食べたいって言ってたから一緒に行こうよ。明日誘っておくね!」



私の勢いに押されたように、泉がぎこちなく視線を上へ投げた。



「ん~、あのさぁ…」



再び私へと戻ってきた視線はなにかが潜んでいそうだったけれど、私には読み取れなくて「どうしたの?」と首を傾げた。

そんな私に泉は小さいため息をついたあと、少しだけ眉を下げて「楽しみだな」と笑った。