キミの恋のはじまりは




泉とふたりで並んで歩く帰り道。



「パフェおいしかった?」

 

となりを見上げる。何気ない会話。

むぅとした目で見返せば、「ん?」と唇に小さな弧を描く泉がいる。



「…おいしかったよ…」



誰かさんのせいで、ほんとは味なんて全然わからなかったけど。

「そ。よかったな」と優しく微笑まれれば、鼓動が少しだけ早くなって、きゅっと痛くなる。


泉といると、心臓に負担がかかる…とかおばあちゃんのようなことを思う。

……なんで痛いのかなぁ。



「どした?」



黙っている私に穏やかな声が降ってくる。それが耳に沁みいればまた心が疼くから厄介だ。



「みんな一緒で楽しかったなーって思って」

「…あの人、なんでいんの?」

「んー、葉山さんは…お茶友だから?」

「……ふーん。あそ」



不機嫌を隠しもせず不貞腐れる泉が少しかわいい。こんなときは泉が幼く見えて、記憶の中のそれと重ねてほっと息をつく。

くすっと笑いが漏れれば、「何笑ってんの」と居心地悪そうな泉に見つかって、緩んだ頬を引き締めたつもりだけれど…できずに肩を揺らしてしまった。