キミの恋のはじまりは


「それにしても、絶妙なタイミングで現れたなー。大変だね?片桐?」



葉山さんが矛先を変えると、泉は煩わしそうに目を眇めた。



「…いまの方がむしろ大変じゃないですから」

「まぁ、だろうねー」

「…んで、帰ってくれません?」

「あはは、それは無理ー」



と、けたけたと明るい笑い声をあげた。

泉が心底嫌そうな顔をしたのは言うまでもない。



「なんか片桐くんってもっとクールな感じかと思ったけど、莉世のことになると顔崩れるね」



パフェを食べ終わった真由ちゃんが面白がるようにいえば、泉は困ったように斜め上に視線を投げた。



「顔崩れるって!」



泉の背中をバシバシ叩きながら、目尻に涙を溜めて大笑いする葉山さん。

居心地悪そうな泉だけど、最近こんな時間が増えて私はちょっと嬉しい。