キミの恋のはじまりは

ふたりの会話をくすくす笑って聞きながらパフェを食べようとすると、葉山さんの視線がこっちに流れてきた。

ちょうどスプーンを口に入れようと大口開けた瞬間に目が合ってしまい、恥づかしいので急いでそれを運んで手で口を隠す。



「それ、俺にも一口ちょうだい?」



葉山さんが私のパフェを指差した。



「あ、じゃぁ、新しいスプーンもらってきますね」

「いいよ、そのままで」



手に持っていたスプーンを奪われると、葉山さんはアイスをすくい口に運ぼうとする。

「え、あの、」とまごついてると、ひんやりとした声が降ってきた。



「…なにしてんすか」



振り向けば、氷点下なみの冷たい目をした泉がいた。

そんな凍えそうな眼差しにも、葉山さんは明るすぎるニンマリとした笑顔を返す。



「何って…あぁ、間接キスだね?」

「マジ勘弁です」

「ははは、いただきまー、」

「させねーよ」



葉山さんの口に運ばれそうになったスプーンを泉が奪い返して、そのままぱくっと食べた。

そうして、「ん」と私に空のスプーンを差し出してくる。

苦虫潰したような嫌な顔をしている泉だけど、耳だけが赤くなっていることに気づいてしまえば、私だって気にせずにはいられない。


うわぁぁぁぁ。

返されても…、間接キスとか聞いたら、もうなんかなんかなんかぁぁぁぁ〜!


いまでだってこんなことあったはずなのに、泉に告白されてからやっぱり意識してしまう自分がいて。

赤くなってしまった顔を隠したくて俯きながら、返されたスプーンを握り締めた。