キミの恋のはじまりは


泉が?

私を?

……好き?


心の中で呟いて反芻する。

何度も頭の中を巡らせて、やっとそれに辿り着くと、体がかぁっと熱くなるのを感じた。

そのタイミングで、背中に回っている泉の指先にきゅっと力が加われば、頬にまで熱が回ってくる。

なにか言わなくちゃと思うのに、自分の中をのぞいても、ちっとも言葉が見つからない。



「莉世が俺のこと幼なじみにしか思ってないの知ってるし。俺と微妙に距離とってることもわかってる。莉世がそうしたいならって思ってたけど、もう無理なんだわ。俺は莉世に近づきたいし、離れたくない」



ふっと私を包む力が弱まって泉の腕の温もりが遠ざかると、大きな手のひらが髪を撫でた。

おそるおそる見上げれば、世界中の優しさを詰め込んだように目元を緩める泉と目が合った。



「もうあの頃の俺じゃないよ。だから、今の俺見て。ゆっくりでいいから。俺のこと考えて」



泉は撫でていた私の髪を一筋摘むと、長いまつ毛を伏せながらそれに唇を寄せるから、泉との距離が一気に縮まる。



「っ、」



咄嗟に動けずに固まれば、吐息が届きそうな間近にいる泉。

目元に影を落としていたまつ毛が上がり、ダークブラウンの瞳がくっと細められる。



「莉世、好きだよ。ずっと好き。昔からずっと莉世だけ」



赤ちゃんに言い聞かせるように、ことさらゆっくり呟く。