その日の夕方、乗り換えのターミナル駅で、葉山さんに私たちは丁寧にお礼を言った。
「今日は本当にありがとうございました」
「めっちゃ楽しかったです!」
葉山さんの顔の広さは想像以上で、行く先々で声をかけられ、たくさんおまけをしてもらった。
縁日をやっていた葉山さんのクラスでは、ヨーヨー2つもらい(こたくんは5つ貰っていた)、当たっていない射的の景品をおまけしてくれた。
ほかのクラスでも「葉山のツレなら」とクッキーもらったり、コロッケ半額になったり……とにかく、本当に目まぐるしくて楽しい1日だった。
「ううん。こっちこそ楽しかったよね、湖太郎」
「うん!またおねえちゃんたちと遊びたいー」
かわいく足に抱きついてきて、上目遣いにこちらを見上げるもふもふの小動物みたいなこたくん。
その天使すぎるおねだりを断れる人って、この世にいないと思う。
「また遊ぼうね」
「うん、ぜったいだよ~!!」
真由ちゃんとこたくんと3人で小指が絡まりそうな指きりげんまんをして笑う。
「じゃぁまた誘ってもいいってこと?」
「はい!いつでも!」
真由ちゃんがなぜか敬礼ポーズをとって力強くいうので、私も笑いながら頷いた。
「それ、平気なの?」
葉山さんはなぜか肩をすくめて苦笑いを漏らす。「なにがですか?」と小首をかしげる私を見て、さらに困ったように眉を下げた。
夕日の溶かされた風にオレンジ髪が攫われて、前髪がふわりと流れた隙間から、揺れる深い色を湛えた瞳がのぞいた。
口元だけを器用に弓なりに引き上げた葉山さんは、短く息を吐き出してこたくんの手をとった。
「じゃ、気をつけて帰ってね。こた、帰ろう」
「おねえちゃんたち、ばいばーい、またねぇ!」
ふたりを見送って、真由ちゃんに「少しお茶してかない?」と誘われ「いいね!」とカフェに入った。

