キミの恋のはじまりは

花島さんが掴んでいたはずの泉の腕は解放され、その手のひらは私に向かって差し出されていた。



「おいで」



優しく瞳を揺らして、少し照れたように言ってくれる姿が珍しくて、きゅっと胸が鳴った。

たったそれだけで、固まっていた暗い気持ちが軽くなって、呼吸が楽になる。



「……いいの?」

「ケーキ。莉世が絶対好きなのあるから。おごる」



久しぶりにみた泉のニカッとした曇りのない笑顔に、心臓が走り回りすぎて痛くなる。


その手をとってもいいのかな、私が。

私だけに差し出してくれてるって思ってもいいのかな。

私なのに?いいの?



ゆっくりと指を伸ばしかけたとき、現実に引き戻す鐘のような声が聞こえた。