キミの恋のはじまりは

花島さんは泉の胸に持っていた看板を押し付けて、かわいらしく唇を尖らせた。



「もう!呼び込み、片桐くんの担当でしょ!働いて~」

「あ、わりぃ」

「ほら、いこ」



看板を素直に受け取る泉を見上げる彼女が、その腕に手をかけて泉を誘う。


それだけで、空気が突然薄くなった。


「片桐くんって基本クールだけど、花島さんとはわりと仲いいよね」
「お似合いなのに、付き合ってないってほんとかな」
「後夜祭でくっつくんじゃない?」


まわりの言葉だけがやけにクリアに聞こえる。


ほら。
特別はあの子のほうだ。
私じゃない。

誰にも言えない黒い気持ちは、いつものように形となることはなく胸の奥に溜まっていく。

喉をぐっとしめて、溶け出さないよう、俯いた。

なのに。



「莉世」



はっきりと私を呼ぶその声が聞こえれば、きっとどんな時だって顔を上げることができるんだ。