キミの恋のはじまりは

「いまからお前んとこのカフェ行こうと思ってたんだよ~」

「こないでください」

「ええ~、冷たい。俺の良心、踏みにじった」

「なんすか、それ」

「こっちが、なんすかそれ、だよね~」



顔を知っている程度と言っていた葉山さんだけど、明らかに嫌な顔をしている泉をまったく気にする様子もない。

ふたりの会話を不思議に思いながら見ていれば、突然肩を揺さぶられた。



「ねぇ!!かっこいいけど、耳がないよー!!うさ耳がぁぁぁ~」



真由ちゃんが正気を失った声を上げた。

そういえば、と改めて泉を見る。

白シャツに黒のタイとカマーベスト、ソムリエエプロンの紐を前できゅっと締めている。白シャツの袖口は無造作に少しだけ巻き上げられていて、嫌味なぐらい様になっていた。

「うさ耳あったら完璧なのにぃ」と項垂れる真由ちゃんを慰めていれば、廊下のあちこちから密やかな声が聞こえてくる。


「破壊力ハンパない…」
「眼福…息できん…」
「オレンジ葉山先輩とのツーショットとか貴重じゃない?!」
「写真とりたーい!」


ざわざわとしだした時、よく通る彼女の声が響いた。


「片桐くんっ!遅いよー!」