キミの恋のはじまりは

葉山さんはバツが悪そうに目を眇めたあと、身をかがめてこたくんの脇に手を入れると「くすぐるぞー」とこちょこちょ手を動かす。

こたくんが楽しそうな高い笑い声を上げると、そのままひょいっと抱き上げて愛しそうに顔を寄せる。


なんかいいなぁ。
葉山さんもこたくんもかわいいなぁ。


ふたりを見ていると、いつのまにか頬が緩む。



「葉山さん、こたくんのことすごくかわいいんですね」

「そうだねー、すごく大事」

「見ててわかります」

「でも……、少し不純な動機だよ」



見逃してしまいそうなぐらいわずかな瞬間、明るさを潜めた目をした。

太陽が薄雲に隠れたかのように、心の中にわずかな影が広がる。


…不純?
どういうこと?


私の顔にのった疑問符に気がついた葉山さんは、ゆるりと口角を上げた。


「俺のことより、ほら、まずは大事な用事済まさなくちゃ」


こたくんを抱いたまま、先を歩いていく。


…大事な用事、があるのかな?