キミの恋のはじまりは

泉は肩で大きく息をして、廊下に投げ出されたままになっている2人を見下ろしてた。



『い、泉!』



呼べば、泉はゆっくりと振り返って私を見た。

怒りに満ちているのかと思ったその気配は、全然違った。



――――― あぁ、悲しませた、私が。



いつも笑っていて欲しかったのに。

その笑顔があるだけで、どんなことがあっても大丈夫だと思えたのに。



初めて会った時、頬を摘まれたこと。本当は全然嫌じゃなかった。

朝、玄関の外で待っててくれて『おはよ』って言ってくれること。

私の嫌いなピーマン、自分だって苦手なのに食べてくれたこと。

『おりがみ博士じゃん!』って目をキラキラさせて言ってくれたこと。



引っ越してまだ1ヶ月しか経っていないのに。私の世界に泉が現れて、まだ少しなのに。


私の中は泉が照らしてくれた優しい光でいっぱいなんだ。