泉の指がふわっと近づいてきて、私の頬をそっと撫でて、すぐ離れた。
「……いつも、うまくできなくて、ごめん」
泉はまた謝って、今度は右の手のひらで私の左頬を包むように触れた。
食器棚へ向いていたはずの体はいつのまにか泉に対面していて、そのシャボンの香りが強くなった。
昔から変わらない、泉の香り。いつものことなのに、どうしてこんなにも胸の奥のほうがざわめくのだろう。
視線を逸らすことも、なにか言うこともできず、ひたすら泉を見つめるしかできない。
いま、瞬きしたら、落としてしまう。
ずっとずっと見せないようにしていたもの、泉に見つかってしまう。
左頬にのる泉の温もり。心地よくて、見失いそうになる。
いつもってなに?
うまくできないってなにが?
……泉は謝らないで。本当は私が言いたいのに。

