キミの恋のはじまりは




みんなが帰ってしまうと、賑やかだった部屋が静かになった。




広いリビングダイニングのはずなのに、泉と2人きりだと思うだけで、なぜか急に狭く感じる。

みんながいた時とは違う心許なさを感じて、おろおろしている心の中の私。


な、なに話そう?!

いやいやいや…なんで私、会話を探してる?

泉なんだから、いつも通りでいいでしょ?



「い、いじゅ……、泉!」



あぁ、勢い余って噛んでしまった…。

恥ずかしい…。


泉は、私の胸の内なんか知らないから、いつも通りふらりと近づいてくる。



「声、でかい」

「え?そ、そうかな?」



うん、確かに大きかった。それは認めよう。でも、噛んだことまでは突っ込まないでいてくれたから感謝する。


名前を呼んではみたものの、続ける内容を考えていなかった。


「えっと」となにか捻りだそうと思考を巡らせていると、泉がカウンターに手をついて私の立っているキッチンの方を覗き込んだ。


急に縮まった距離。目の前で泉のダークブラウンの前髪が揺れている。

反射的に上半身を少し引いてしまったことには、どうか気づかないでいて欲しい。