冷蔵庫から食材を出して夕飯作りを始めると
「…包丁、本当に気をつけて」
と、潤くんが横から心配そうに覗いてくるから、包丁をぎゅっと握って、わざと得意げに鼻を鳴らした。
「お姉ちゃんより、私のほうができるよー」
「ああ、それって、なんとかの背比べってやつでしょ?」
「~っ、ひどい!」
「ははっ」
「もう、お姉ちゃんに潤くんにひどいこと言われたって言いつける!」
「えぇ、それ本当にやめて。あの人、莉世のこと溺愛してるから。俺、殺られる」
「ふふ、潤くんは私に勝てないね」
「……まぁ、そだね」
素直に負けを認めた潤くんから溢れる笑みは、私をすくってくれたよく見た優しいそれと同じようで、全然違う。もっともっと深い優しい笑顔。
こんな人がお姉ちゃんの隣にいて、お姉ちゃんの隣にこんな人がいて。
そんなことを思っても、もう、きゅっと心臓がなることはなかった。

