キミの恋のはじまりは


……明らかに、私、場違い。

この感覚、久しぶりだな……。


ぼんやりとそれを眺めていれば、ふいに泉と目が合ってしまったので、慌てて視線を逸らした。

なんとなく取り繕うように俯きながら前髪を手で押さえれば、カウンターを挟んだキッチンから「ぷっ」と吹き出すような声が聞こえた。



「な、なんで笑うの」

「いや、なんか…、ねぇ?」



潤くんはくすくすと笑いながら、なにかを含んだ返事をするので、じとっとその顔を睨んだ。



「……潤くん、さっきから、なんか楽しそうだけど」

「そーんなこと、ない、よ?」



肩を楽しそうに揺らしながら首を傾げれば、明るい茶色の髪が同じ方向に流れた。

潤くんは泉の方を見てさらに笑いを深くしたようで、口元を手で抑えて耐えている。

むっと唇を尖らせて黙れば、潤くんは「ごめんごめん」と眉を下げながら言って「はい、お詫び」と、さっき買ってきたコンビニスイーツを私に差し出してくれた。


そうだ、いま、こんな状況なのも潤くんの言葉に流されてしまったからで。

ちゃんと断れない私が一番悪いのだけれど、きっと責任の一端は潤くんにもあるはずなので、お詫びの品はありがたく頂く事にする。