キミの恋のはじまりは


……5分前の私。

なにしていたんだよー!!


肩を小さくすぼめ、みんなから離れたカウンターキッチンのスツールに座りながら、気づかれないようにため息をつく。


もう、こういうところがだめなんだよ!

私のばかーっ!!ばかばかばーか!


心の中で思う存分自分を罵ってみるけれど、気分は重くなる一方だ。


ちらっと視線を前方に投げれば映る光景に、私だけが明らかに異物で、いるべき場所じゃないとわかる。

居心地の悪さを少しでも紛らわそうと膝に乗せた鞄をぎゅっと抱きしめたけれど、それ自体がまた彼らと違うものだから余計に気持ちが固まってしまった。



「えー、ほらほら、こっちのほうがよくない?」

「おお、いいねぇ。マジ、美沙、すげぇなぁ~」

「あ、それさぁ、この色にするのはどう?」

「花島ってセンスあんなぁ~」

「うふふ、ありがと」



……いやいや、これ、現実?


今日、学校で話していたことを思い出し、目の前に広がる非日常を心の中で2人に報告する。


……優香ちゃん。

いま、私の目の前に、あの、きらっきらの世界が広がっていますよ……。


……田場ちゃん。

漫画の世界、やっぱりあながち間違いではないらしいですよ……。