「ちょっと、待って!話が見えない!」
「片桐くんって誰?もしかして……」
優香ちゃんと田場ちゃんが模造紙の上に手をついて、私の方へぐっと身を乗り出してくるから、思わず上半身を反らせて距離を取ると
「「莉世ちゃんの彼氏?!」」
2人の声がきれいにハモって、教室中に響き渡った。
一瞬静かになった教室のあちこちから、急に視線がこちらに注がれるのを感じて、顔から火が出そうなぐらい熱くなる。
「ち、ち、ちがっ…、」
酸欠の魚のように口をぱくぱくさせて、手を大きく振って「ちがう」のサインを一生懸命作る。
「2人とも声が大きいよ!」
「えー、ちがうの?」
「じゃぁ、なに?!だれ?!」
さらにこちらへ詰め寄ってくる。……2人とも勢い余って、手の下の模造紙がよれてちゃっていることに気づいていない。

