「傘持ってんじゃねぇかよ」

「これは貰った」

「誰に?」

「通りすがりの良い人に」

「…誰だよ、あんまりホイホイ知らない奴と話したりすんなよ」


カオルは私のことを不審者か見分けがつかない子供だと思っているのか、小さい頃に先生に注意されたことと同じことを言った。


「寒いか?」


カオルは私の手を取り、少しでも温まるように強く握る。

さっきまで荒ぶっていた感情が、カオルの暖かい体温に落ち着きを取り戻す。

もっとカオルが欲しいと、私はカオルが濡れてしまうことも忘れて抱き締める。


「…どうかしたか?」


私から抱き締めることは滅多に無いからか、カオルが少し動揺する。