「明日のあなたは私のせいにするかもしれないでしょ」


私がそう言うと、ただでさえ笑わない無表情の顔から更に口角が下がったように見えた。


「俺には明日も明後日も無いようなもんだ」


それって、つまり…


「もしかして、余命明日ですか?」

「違う」

「違うんかい」


紛らわしい言い方してきた男に今度は私が面倒くさそうに息を吐くと、男はフッと笑みを零す。

少し口角が上がるくらいの笑い方だったが、私はやっと表情を崩せたことに嬉しくなった。


「じゃあ、何で明日が無いんですか?」

「…ずっと時間が止まってるんだ、だから明日が来ても何も変わらない」


止みそうにない雨を眺めながらそう呟く男の横顔があまりにも哀しく見えた。

それと同時に、似ていると思った。

お姉ちゃんが出て行ってから自分の自由は無くなり、同じ時間を過ごす毎日に、まるで私だけの時間が止まっているように感じた。

明日が来ても、明後日が来ても何も変わらない毎日。