「ちょっと!恥ずかしいから回さないでよ!」


カオルは満面の笑みで、くちばしで突くキツツキのように何度も何度も短くて軽いキスをする。

それが少し鬱陶しくて、私はカオルの首に腕を回すと自分から長めにキスをする。

唇から離れると、カオルは私の顔を見ながら少し「んー」と言いながら考える。


「…なに?」

「これから説得しに行こうかと思ったけどやめた」

「…もう説得する気でいたんだ。
じゃあどこか行く?」


カオルは私をきつく抱き締めると、私の耳元でわざとらしく息を多めに含みながら甘く囁いた。


「俺ん家で抱く」


耳から脳にいき、その言葉を私が理解した瞬間、顔を真っ赤に染める。

いつでも変わらない初々しさを残す私に、声を出してカオルが笑う。

カオルと会ってからずっと目まぐるしくて、ドキドキして、もうお腹いっぱいだ。

だけどやっぱり全てが愛しい時間で、これからも愛しい時間が続くのだと思うと楽しみで仕方が無かった。

満開な花弁を見せびらかすように立っている桜の木の下で天を仰ぐように願った。

この先も、みんなを照らす光が差し続きますように─────





【END】