確か以前にバツイチだと言っていた。

再婚をしていなければ、私の家と同様、雪希の親は母親しかいないのかもしれない。

雪希の入院費用を払いながら、仕事の合間に見舞いに行って、私では想像できないくらい大変だったのだろう。

仕事は何をしているのだろう。

紀子さんの荒れた手を見て、胸が締め付けられるような思いだった。

目の下のクマも酷く、毎日がとても不安でろくに眠れていないのだろう。

私はカバンからハンドクリームを取り出すと、紀子さんの荒れた手に塗って、少しでも和らぐようにマッサージをする。

紀子さんが目を覚ますまではそばにいたいと考えていると、私の携帯の着信が鳴る。

着信元は母からだった。


「もしもし」


私は急いで病室から出て電話に出る。


「もうこんな時間よ、今あなたどこにいるの」


母にそう言われ、私が耳から携帯を一瞬離し時間を確認すると、20時をゆうに越えていた。