「それで?いつ出て行くとかあるの?」


海斗にそう聞くと、海斗は答えずに部屋を出て階段を下りる。

聞こえていないのだろうと、私は後を追いもう一度聞く。

だが、やはり答えない。


「もしかして謝ったから、それで仲良しになった気でいるのかな?」

「俺のこと、大が付くほど好きなんだろ」

「誤解されるようなこと言わないで貰えるかな?
友達として好きだと言っただけで、これ以上泊めるかどうかは別の話だよ?…ん?聞いてるかな?」

「良い匂いする」

「聞いてないね…
前から思ってたけど、不良って都合の悪いことは耳に入らない病気でも持ってるの?」


ずっと無視し続ける海斗に徐々に腹が立ってくるが、リビングに入った途端美味しそうな匂いに二人してお腹が鳴る。

テーブルの上を見てみると、溢れんばかりのおかずの量に私は目を見開いて驚く。


「…この家、力士でも住んでたっけ?」


キッチンに立つ母と奈都に冗談半分の本気半分の問いを投げかけると、菜穂が皿を並べながら吹き出す。

だが、奈都はいつものように満面な笑みで笑って綺月に駆け寄る。