「ただ息をしてるだけの屍だったカオルが変わって、復讐しか考えてなかった杏樹さんが変わって、みんな前に進んでる」


海斗は私から視線を逸らし、どこか遠くを見つめる。


「俺だけがずっと同じところに立ってる」


海斗の瞳から色がなくなっていく気がした。


「俺もアイツらみたいに進みたい。
お前と居たら何か分かるかもって思った」


そんな事を口にすること自体、海斗らしくなかった。

私はそんな海斗を見て、大きなため息を吐いた。


「人任せにしないでよ。
カオルや杏樹を変えたのは私じゃないよ、みんながいて、本人がちゃんと今の自分と向き合ったからだよ」


そう海斗に冷たく言い放つ。


「私はずっと本心しか言ってない」


今思っていることを正直に口にして、手を伸ばしその手を握っただけだ。