杏樹の話を聞いて、私はこの人はどれだけ自分を否定し続けたのだろうと思った。
誰かを傷つけては否定して、否定しては自分を傷つけて、その繰り返しだった。
話を聞いた限り、杏樹が心から幸せだと思えた時間は、ミナトがいた時期だけだったように感じた。
でも、もう今は違う。
杏樹の仲間は確かに今目の前にいるし、この先杏樹が道を踏み外しても彼らが絶対に引き止めてくれる。
だから、もう杏樹の選択の幅を誰も狭めないで欲しい。
いつでも自由に選択できるように、そして杏樹がまた幸せだと思えるように、どうか杏樹を一人にしないで。
私の願いは口にしなくても、ここにいるみんなは既にそう心に誓っていた。
「綺月に会えてよかった」
杏樹は私に真っ直ぐな嘘偽りない言葉を伝えてくる。


