「嘘ですよ、しないですよ」

「…は?」

「仲間殴るなんてしないですよ。
俺全然怒ってないですし、それより謝るなら菜穂と綺月ちゃんにお願いします」


雪希は本当に怒っていないのかケロッとしていた。

目を覚ましてからも一度たりとも杏樹に対して怒りを見せたことが無かった。

それは雪希が必死に隠しているのかと思っていたが、どうやら本当に怒っていないようだった。


「…お前、死にかけたんだぞ」


飄々としている雪希に、杏樹は見るからに驚いていた。


「でも、死んでないですから」


死ぬ思いをしたのに、死ななかっただけで簡単に人を許せるのだろうか。

むしろ殴られたり、お金要求される方がよっぽど楽な気がした。