「今までのこと本当に悪かった。
謝っても自分のやった過ちが許されるとは思っていない。だけど、まずは謝らせてくれ」


顔も見えなくなるほど深く頭を下げ、謝る杏樹を目の前にして、怒る気力はなぜか湧かなかった。

杏樹の気持ちは俺達にも痛いほど分かるからだ。


「雪希に怪我をさせたことも一生かけて償う。
何発だって殴ってもらっていいし、慰謝料だって払う」

「じゃあ死ぬまで殴っていいっすか?」


温厚な雪希の口から放たれた冷たい言葉がナイフのように容赦無く杏樹を刺す。


「…分かった」


杏樹は覚悟していたように、返事を返すとゆっくりと顔を上げる。

あっさりと承諾する杏樹に、雪希は膨大なため息を吐いた。