再び、光が差す-again-〈下〉


人が行き交う駅前で、ほのかに甘い香りがした。

どこか嗅いだことのある懐かしい匂いだった。

数歩歩いたところで、「あっ」と気付いた。

慌てて振り向いた時、見覚えのあるシルエットに思わず足が元来た道をひき返していた。

見間違えるわけが無い。

強くてカッコ良いその背中を必死で追いかけた。

気付くと駅前からかなり離れて、まるで手招きされたかのように人通りの少ない路地に来ていた。

角を曲がり完全に人が誰もいない場所に来た時、後を追っていたはずの男の姿はもう無かった。

その瞬間、脳が揺れるほどの強い衝撃が頭に響き、気付いたら地面に叩きつけられていた。

グラグラと歪む視界の中、光が消え誰かが影を作る。


「頼むから俺のために死んでくれ」


震えるような声が耳に届いた瞬間、ブチッと消え真っ暗な画面を映すテレビのように、雪希の視界がシャットアウトされた。

その男の声は聴いたことのない声だった。

でもあの背中は確実に"あの人"だったんだ。