「堂々と生きなさい」


俺に触れる手は優しいのに、その言葉は気持ちが込められているのかとても強かった。

自分は今まで間違いばかりを繰り返してきた。

自分のせいで両親が死んで、生きていく価値なんて無いと思いながら、必死にこの地にしがみついていた。

どれだけ間違えても、それが正しくないと分かっていても、簡単に死を選ぶのは楽な道だと思った。

だから、誰にもどこにも執着しないように、中途半端に隠れるように生きてきた。


「学歴無くても中卒でも、あなたは十分妹さんを育ててるじゃない。
あなたは私なんかよりも立派よ。
私が怯んでしまうくらい堂々としていなさい」


小さい頃、撫でられた母の手の感触を思い出して泣きたくなった。

それに慌てて自分の手で目元を隠し、我慢して歯を食いしばる。


「綺月を助けてくれて、ありがとう」


ありがとうなんて言われるとは思ってなかった。

顔を上げると、綺月の母親はもっと早く素直になれていたら、美月を失うことも無かったのにと言いたげな顔で、今までの自分を悔いているような表情をしていた。