俺たちは誰もいない待合室の椅子に腰掛け、すぐに口を開いたのは綺月の母親だった。


「妹さんがいるんでしょ?大丈夫なの?」

「連絡しておいたから大丈夫です」

「そう、聞き分けがあるいい子なのね」


綺月のことが心配で、このまま帰っても奈都に心配されるだけだ。

聞き分けがいいわけじゃない、自分が我儘なだけだ。

もしかしたら、綺月とはもう会わないでくれと言われるかもしれない。

両親もいない、学歴も無い、喧嘩ばっかやって正しい生き方をしてこなかった。

綺月の母親の言葉が怖い。

聡に殺されかけた時よりもずっと怖い。


「綺月、あなたに会ってから変わったわ」


次出る言葉を待ち構えていると、驚くほど優しい口調でそう言った。

カオルが顔を上げ、綺月の母親の横顔を見る。

綺月に似て綺麗な顔立ちだった。