「菜穂!」


私はまた横たわっている菜穂に近寄ると、すぐにシャツのボタンを閉める。


「大丈夫だから、もう大丈夫だからね」


菜穂を起こすと、私は力一杯抱き締める。

何度も背中を摩り、まだ震える身体を落ち着かせる。

私の体温に徐々に落ち着きを取り戻すと、押し寄せる安堵に菜穂が涙をボロボロと零す。

何分そうしていただろうか、気付くと泣き疲れて菜穂が私の胸で眠った。

起こさないようにゆっくりと自分の太ももの上に頭を置く。

そこでやっと桜と目が合う。


「馬鹿みたい、たかが身体触られたくらいで泣くほど取り乱しちゃって」


桜は菜穂が眠っていることをいいことに、馬鹿にするように笑って罵る。


「あなたは簡単に自分の体を売るのね」

「幸人を手に入れられるならなんでも売るわよ」


凄い執着だった。

だから自分の命も簡単に捨てられるんだ。

私は哀れな目で桜を見る。