アナタノオト

人の波に逆らって目についたトイレに駆け込んだ。

一番近い個室に入って、バンッと勢い良く扉を閉める。

「はぁーー」

扉にもたれ、吐いた溜め息は壁を跳ね自分に返ってくる。

わたしは手話が嫌いだ。

右耳は完全に聴こえなくても左耳の聴力は正常だから。

まだ、聴こえるから。

聞こえない人扱いされているから。

だから補聴器もつけていない。

急にトイレが騒がしくなった。

「ねー聞いた?うちらのクラスのてんこーせー」

わたしのことだ。

扉に耳をつけ、小さく呼吸を繰り返す。

「くんに泣きついたんでしょ?」

「耳が聞こえないからって悲劇のヒロインぶっちゃって。キモッ」

朝のHR開始のチャイムが鳴り響いて、重たい足を引きずりながらトイレを後にした。