「水穂!」
「いっちゃん、帰ろ」
お互いにこっと笑い合う。今日は終業式。つまり、俺らは明日から夏休みってわけだ。

俺、生都(いつ)と水穂は西木高校1年生。
水穂(みずほ)とは最近仲良くなったのだが、女なのに一人称がこんな俺を見ても一度も不思議そうな顔をしたことがない。今までで1番信頼できる親友だ。
「せっかく花のJKになれたんだよ!夏、 たのしもうぜーい!!」
いつもノリノリで明るくて社交的な水穂と内気でネガティブな俺のコンビは、クラス内でも異色にひかるらしい。

…いや、正確に言えば、水穂と仲のいい俺が。今日も今日とて周囲からの視線が痛い。まあでもそんなもの、明日から始まる夏休みを考えれば気にならない。ゲームしまくってもいいし、好きな曲を聴きまくってもいい。こんなのもちろん、楽しみでしかない。