「それでも、哀しさは消えないの。」
「そうですよね。チャイルさん、ずっと笑顔だし、俺たちに親切にしてくれるし、それはすごく助かりました。でも、自分を大切にしてくださいね」
思わずお節介なことを言ってしまう。
「ありがとう。脱線させてしまったね。さっきの話に戻しましょう。
木蘭(もくりん)、それがそっちの世界で私につけられるはずだった名前。きいたことないかしら?」
「ある!あります!これ、木蘭はどう思うかなって、よく父さんと母さんが話しているのを聞きます。」
そうだったのか。木蘭は姉さんのことだったんだ。俺は1人っ子じゃなかったのか。
「ていうか、あの、一個気になったんですけど、つけられるはずだった名前って。つけられた名前ではないんですか。父さんも母さんも、普通に呼ぶし、考えてますもん、チャイル−木蘭さんのこと。」
「…っ。ありがとう。私ここで生都に会えて良かった。
そうね。つけてもらった名前よ。まだ憶えていてもらえているなんて、嬉しい」
いつのまにか木蘭さんの目には涙が浮かんでいる。
あまりにきれいすぎる。
つられて俺も泣きそうだ。
「俺も。良かった。会えて。教えてくれてありがとう。絶対、忘れない。」
「ふふっ。うん、ありがとうね。
あと、ひとつお願いしてもいいかしら。」
なんだろう。俺は、姉さんの目をまっすぐに見つめてうなずく。
「約束してほしいの、私と。」
「…?なにを」

「あのね、忘れないでほしい。誰よりも、」