別の案内人の人に連れられて、観光に行くという水穂と別れ、俺はチャイルさんと森の中へ入っていく。
「そこに、ベンチがあるからそこで話しましょう?」
2人でベンチに座る。
が、チャイルさんはなにか困っているような、迷っているような表情で何も言い出さない。
俺もついうつむいてしまう。
「あのね、私は生都の姉なの」
気まずい沈黙が決心したようなチャイルさんの声によって、破られる。
「えっ…。でも俺、ずっと一人っ子だと…。」
うん、そうだよね。会ってないもの。と、寂しそうに微笑むチャイルさん。
「行けると思ったのにな。あと少しで生まれられる、というところでここに引き戻されてしまったの。上手く、出ていくところまで、辿り着けなかったの。」
目を伏せて悔しそうだ。こっちの世界を見れることをよっぽど楽しみにしていたのだろう。

「戻って来て凹んでいる私に、カミサマが案内人をやらないかって言ってくれたの。驚いたわ。だって、初めてのことよ。両方の世界を繋ぐことは、お互いにとって、とてもリスクがあるから。
…異世界に行って帰ってこられなくなった。こういう話、よく聞くでしょう?たまに、間違って繋がってしまうの。逆もあるのよ」
「わたがしの国の人たちがこっちに来ちゃうの?」
「まぁ、詳しい事例は話せないけどそんな感じよ。
そんなこんなで今は案内人をやってる。案外人が来てくれているわ。宣伝も何もしていないし、なんでだかは分からないけど。」
でも、誰かが笑顔になってくれるのを見られるのは、私にとって救いになっているのよと、そう話すチャイルさんは笑顔だ。

(でもこの笑顔には影がある気がする)