3分ほど歩いただろうか。ふいに後ろから声をかけられた。 
「あなたたち、もしかして辿り着けちゃった感じですか?」
ぱっと身を翻し臨戦態勢。
(なんだこいつ。なんかなんて言うか人間ぽくない)
「あはは、そんな警戒しなくていいのよ。あ、まぁでもその姿勢は大事だからね。続けるんだよ。」
「誰で」
「もしかして、チャイルさんですか?」
警戒する俺を遮る声。横からぴょこっと顔を出した水穂は、なぜか嬉しそうだ。
「あら。あなた、よく知っているのね!名前は?」
「やっぱり!私、水穂っていいます。こっちは友達の生都。あ、私はいっちゃんって呼んでるんですけど。」
そこまで話して俺に向き直る。
「あのね、チャイルさんはうちらの世界とわたがしの国との境界線を守る人であり、案内人なの」
チャイルさん、と言われた人がうなずく。
「2人ともここにいるってことは、わたがしの国を目指してきたのよね?迷って着いちゃった訳ではないよね?」
「はいっ、それはもうもちろんです」
水穂が元気よく答える。
「良かった。嘘だったらこの後、着いてこれないから、言ってね。そうしたらちゃんと帰り道教えますからね。」
改めて念を押される。
着いてこれない?
でもたしかにこの後カミサマに会って使命をきくっていう、ルートしかないのであれば、その目的で来た人だけしか連れて行けないよな。
一瞬、言葉に違和感を覚えつつ、納得する。
「大丈夫かな?わたがしの国はあの入道雲の向こう側よ。じゃあ、着いてきて!」
2人でうなずく。
ようやく俺も警戒心が解けてきた。
この人?は人かはわからないが、コミュニケーションが取れる。