「ところで」
1時間ほど休憩して、ここからどうするの?と、きりだす。
「えっとね、あっちの道の方に行く」
水穂が指差したのは登山道から外れた獣道。
獣道とは言っても道があるのかも微妙なくらい草木が生い茂っている。
「いやいや、いくらなんでも危ないだろ。迷子になるよ」
「でもそう書いてあるし…」
「だからって無茶したら帰れなくなるよ」
空には入道雲。雨が降ったりでもしたら…
「それは大丈夫!」
「なんでそんな自信満々なの…」
「えー、でもさ、ここまで来て帰りたくはなくない?」 
「…それは、たしかに、そうだな」
つい、折れてしまう。
「分かった。じゃあ、2人ではぐれないように気をつけよう」
「うん!ありがとう」
2人で水穂の言っていた道は入っていく。あんなに草木が生い茂っているように見えたのに、普通の道路みたいだ。歩きやすい。念のため、方向を覚えておこうとチラリと後ろを振り返りつつのんびり水穂についていく。
(これなら迷子にはならなそうだ)
やっとちょっとだけ肩の荷が降りたように思う。しかし、相手は大自然だ。
油断するな。と、必死に言い聞かせて進む。
突然、目の前が眩しく輝いた。驚いて一瞬目をつむる。しかし、すぐさま顔を上げる。