教壇の教師、悪食なり

「すべてひっくるめて、私は真田さんを許しています。どうか、これ以上自分を責めないでください」

彼は私の膝の上で顔をうつ伏せて、静かに泣いていた。
その様子がどうしても小さな子どものようで、母性のような生ぬるい感情が湧き出てしまう。掴み損ねた手をみたとき、私はこの人と縁はないと核心していた。でもそれが揺れて、壊れようとしている。どうせならまだ縋ってほしい、といった自分勝手な悪い自分が顔を出してきた。頭を撫でると柔らかなあの日見た髪色を近い距離で見て愛しいと感じた。
彼に恋はしていない、でも、彼がその壁をぶち破ってくれるなら。

理性と悪魔が攻防して出した、折衷案は。

「私は大坪みなみと言います。年は改めて24歳、国語の教諭をしています。休みの日は呑んべいなので酒屋巡りとおつまみ作り。あとはそれなりにインディーズのロックバンドの曲を聞いたりしています。あんまり外にはでないですね」

驚いた顔をして、下から見られていた。ガラス玉みたいな大きい瞳は零れ落ちんくらい大きく見開いていた。私は無視して続けた。