教壇の教師、悪食なり

一瞬で静まらせたのは真田さんだった。目は三角にとがっていて、これは本気で怒っていると悟った。殴りかかりそうな勢いで詰め寄ろうとしたから、私は後ろから羽交い絞めにした。

「落ち着いて、ユズキ。怖がってるって」

「落ち着いてるって」

「落ち着いてないやつがいうセリフなんだってば」

もごもごと動いて、肘うちでも食らいそうだったがなんとか取り押さえることができた。
もう見世物になるつもりもなくて、私は真田君の手を引いて教室に出る。

「ちょっと頭冷やさせてくるね、ごめんね、上園さんたち」

そう言い残して、教室を去った。
そのあと残された生徒はとんだ噂を生み出した。

「あそこ二人できてるの？」

「というか石塚喋り方変わった？なんか、大坪ちゃんみたいじゃなかった？」

「ちょ、うえぴー石塚に惚れない？あれやばい笑顔だったよ」