私があの時…クロさんに出会わなければ…こんなことにはならなかった。
全部……私のせいだ。
私のせいでクロさんを……。
「なんでも今日、判決がくだるみたいで……」
私は目を瞑った。
『ミホ』
いつも私のことを考えてくれたクロさん。
私は…貴方に何も返していない。
「……」
クロさんに恩を返すのはきっと今だ。
「女将さん」
私は目を開けた。
そしてーー。
「お世話になりました」
私はぺこりと頭を下げた。
「ミホ……?」
記憶を失って、行くあてがなかった私をクロさんが拾ってくれて…この宿を紹介してくれた。
ずっとずっと……。
ここで過ごしてきた日々はきっと忘れない。
「私は王都に行きます。クロさんを助けに」
私は女将さんの目を真っ直ぐ見てそう告げた。
クロさんを助けたい。
役立たずな私ができる最後のことだと思う。
「ミホ、無理だよ!王都に…王族に楯突くなんて死にに行くようなものじゃないか!」
そう女将さんは必死に止める。