一瞬、強くバットで頭部を粉砕されたのかと思うほどのショックを受けた。私は冷静を表面上保ったつもりで、なるべく穏やかに言う。

「だから、昨日のは、なかったことで、ってさっき締結したでしょう」

我ながら不気味な笑みを浮かべたと思う。

「ああ、そうそう、大丈夫なら別にいいんだけど、スリッパなら多分風呂場にあるよ」

それだけ言って祥慈はまた倒れるように眠りにつく姿勢に入った。

私は「ありがとう」とだけ言ってスリッパをバスルームで見つける。

部屋を出ようとしたところで、ゴミ箱が目に入る。黒い、避妊具と思われるものが入っていたのであろう破り開かれた袋をそこに見つけ、思わずギョッとした。

そりゃ避妊はするよな、というまずは視覚的な衝撃を受け止める気持ちと、ありがとう、という感謝の意と、同時に祥慈が常にこういった物を持ち歩いてる、という別角度からの衝撃がお互いに私の脳内で格闘し合う。

「ちゃんとしたから大丈夫だよ」

硬直した私に気付いたのか、祥慈が姿勢を変えないまま言ってきた。

私は意味もよく分からないまま「うん、ありがとう!」と元気に返し、バタバタとスマホとカードキーを手に612の部屋を出た。

OHMYGOD…

後から後から思い出される情報に、私は穴があったら入りたい、入って一生出たくない後悔という大波に飲み込まれていた。