初恋の味は苦い

ホテル備え付けのドライヤーは音と風力は強いものの、なぜかひたすら冷風が出続けた。

最初は何度かスイッチを切っては付けてを繰り返したが、何度やっても結果は同じだった。

セミロングの髪が全く乾かない。

私の髪はしんなりとかなり冷たくなっていた。

どうしよ。

鏡の前の、顔が赤くなってる自分を見つめる。ふと浮かんだのは祥慈の顔だった。

きっとフロントに言えば別のドライヤーを貸してもらえる。そんなことは百も承知だ。スマホの画面上で指が迷う。

気付けば、えい、と祥慈に電話をかけていた。

「なに」とすぐ彼は出た。

「ドライヤー貸してくれない?」
「ドライヤー?」
「なんか壊れてるみたいで、冷風しか出なくて」

そこまで言うと、少しの沈黙があった。
なんだかこそばゆくて、今すぐ電話を切ってしまいたくなる。

「いいよ、来れば」

やっと祥慈がそう言ってくれた。

私は「じゃあ今から行くね」とだけ言って電話を切った。

少し鏡の中の自分を確認する。大丈夫だろうか。何かを期待する自分。

私はスマホとカードキーだけを持って部屋を出た。